日本で見られる野鳥に、ヨシゴイと呼ばれる鳥がいます。

鷺の仲間で、水辺や水田で見ることのできる鳥ですが、独特な特徴を持つために発見が困難な野鳥としても有名です。

ヨシゴイとは、どのような性質を持った鳥なのでしょうか。

ヨシゴイの基本情報

ヨシゴイは、サギ科ヨシゴイ属に分類される、鷺の仲間です。

漢字では「葦五位」「葭五位」と表記されます。

全長は30cm~40㎝で、鷺の仲間としては最小の部類に入ります。

ユーラシア大陸に広く分布し、中国やインド、ベトナムなどの大陸からマレーシアやミクロネシアなどの太平洋の島国、さらにはロシアにも生息域を持ちます。

学名には「中国産の鳥」という表記が使われているため、原産は中国とされています。

世界には8種類のヨシゴイの仲間が確認されていて、日本にはヨシゴイ、オオヨシゴイ、リュウキュウヨシゴイの三種類が大陸から渡ってきます。

夏鳥として、日本全国に渡来する渡り鳥として認識されています。

主に中部、近畿、中国地方に多く分布します。

本州中部より南の地域では越冬して、一年中姿が見られる場所もあります。

主に湿地や湖沼、水田など水の流れが緩やかな水場で活動します。

葦(よし)と呼ばれる植物の群生地に生息するため、ヨシゴイという名前がつけられました。

ヨシゴイの生態

ヨシゴイは肉食で、川に住む小魚やカエル、カニや貝を捕食します。

水上の草の影でじっと息を潜めて、近寄ってきた獲物を捕まえます。

捕獲率は非常に高く、無駄のない動きをするため、水辺の忍者・ハンターとも呼ばれることもあります。

早朝と夕暮れ時に活発に活動し、夕方になるとよく鳴きます。

主に単独で行動します。

繁殖期になると、オスとメスがつがいで巣を作って暮らします。

巣は葦の茎や葉を器用に編んで、お皿のような平たい巣を作り上げます。

初夏から初秋にかけてが繁殖期で、一年に5個前後の卵を産み、オスとメスが交互に温めます。

卵は20日程度で孵ります。

葦原の中が比較的安全地帯なため、巣で長く子育てをする習慣はなく、雛は生後15日くらいで巣立ちます。

巣の外で親からエサをもらったり、自力でエサを探し始めます。

ヨシゴイの独特な外見

ヨシゴイは茶褐色から橙色に近い、目立たない体色をしています。

翼の先端や頭の上は黒っぽく、背中に小鹿のような斑点や、首筋に縦縞の模様があります。

これらの模様は、メスのほうがくっきりと浮かびあがっています。

オスのほうがやや濃い目で、鮮やかな体色をしています。

鷺の仲間としては首や足がが太くてがっしりしているのが特徴です。

首は飛ぶときは短く縮み、獲物を探す時や身を隠す時には長く伸ばします。

主に葦の茎に止まっているため、歩くのが苦手です。

蓮や浮き草の上を歩いて移動することもありますが、平らな場所を歩く時はガニ股歩きになり、少し不格好に見えます。

ヨシゴイの独特な色合いと体型が、薬味のミョウガに似ていると比喩されることもあります。

ヨシゴイの個性的な擬態

ヨシゴイはとても臆病な性格で、滅多なことでは人前に姿を現そうとしません。

一日のほとんどの時間を葦原に隠れて過ごします。

ヨシゴイの体色も、乾燥した葦原の中に紛れ込みやすいため、地味な色合いをしています。

普段は上手に隠れているため見つけるのが非常に難しいですが、成長期の青々と茂った葦原の中では、逆に目立ってしまうという欠点も持っています。

ヨシゴイは自分の身に危険が迫ると、体を縦に細長く伸ばして、葦原の中でじっと動かなくなります。

これは葦の茎に擬態して外敵から身を護るという、ヨシゴイ特有の行動です。

葦の中に隠れて身を潜めるヨシゴイの習性はとても画期的な方法ですが、既に発見されている状態では、擬態が裏目に出ることもあります。

ヨシゴイの生息域の減少

ヨシゴイが生息地とする葦原は、昔から日本の湿地で一般的に見られる風景でした。

しかし近年では河川敷の埋め立てや開発、水田や湿地の減少によって葦が育つ環境が減少傾向にあります。

それに伴って、葦原でほとんどの時間を過ごすヨシゴイにとっても快適に暮らせる環境がなくなり、日本で見られる姿は徐々に少なくなっています。

繁殖する環境が減ることで、全体的な個体数も減少し、現在は環境省レッドリストによって純絶滅危惧種に指定されています。

しかし最新の研究によって、葦の根や茎に水質を改善する働きがあることが証明され、汚れた河川の水を浄化するために、再び葦原を増やす取り組みが行われています。

今後の環境整備によっては、ヨシゴイの数も再び増加することが期待されています。

ヨシゴイの特徴を知ろう

ヨシゴイは愛好家に人気の野鳥であると共に、その体の形や歩き方、擬態する習性が珍妙で面白いと、最近はインターネットでも話題になっている鳥です。

その愛くるしい姿をいつまでも日本の風景の中に溶け込んでいられるように、温かく見守っていける環境作りが必要です。