ハゼならみなさん知っていると思いますが、「ヌマチチブ」というハゼの仲間をご存知でしょうか。

実は、日本でもごく身近に生息している魚ですが、熱帯魚として飼育されている魚でもあります。

今回は、そのペットとしてのヌマチチブの生態や飼育方法についてご紹介します。

ヌマチチブの外見

ヌマチチブは体長10〜13cmくらいの淡水魚で、体全体には茶褐色に白い斑点模様があります。

ハゼの仲間で、日本でも本州以南のかなり広い範囲で生息が確認できている魚です。

熱帯魚としても飼育されており、比較的手に入れやすい魚でもあります。

熱帯魚ショップでは、一匹あたり300〜400円で取り扱われていることが多くなります。

チチブとヌマチチブは区別されないことも多いのですが、体に特徴的な違いがあります。

ヌマチチブの場合、胸ビレの付け根の部分に黄色と橙色の線のような模様が入ります。

またエラから尾ビレにかけて、背中の部分に等間隔白い斑点が並び、縦縞模様のようにも見えます。

よく観察しなければわかりませんが、背びれにも赤褐色の帯のような模様が入っているという違いがあります。

ヌマチチブの生態と食性

ヌマチチブは、多少の水質の悪さには目をつむるような強い環境適応力があります。

そのため首都圏の河川でも見られる魚で、一般的な熱帯魚とのイメージとは異なるかもしれません。

野生では川底にいることが多く、水槽に入れても比較的底に近い範囲で泳いだりじとしていたりします。

お腹の部分が吸盤になっており、強い水流や多少の段差があっても移動することができるというたくましい魚です。

食性は、主に小魚や小さな虫を食べる肉食と言われています。

しかし、実際には水中の藻類を食べることも知られており、雑食というのが正しいでしょう。

水温は30℃を超える極端な暑さでなければ生きていくことができます。

飼育する時には弱酸性〜中性付近の水質であれば問題ないでしょう。

ヌマチチブの性格

見た目も色も目立たず、ぷっくりとした顔はずっと見ていると可愛らしいとも思えてきます。

しかし、その見た目とは反対に、性格は凶暴で、かなりの暴れん坊な魚です。

縄張り意識がかなり強く、他の魚や同種に対しても強い敵対心を剥き出しにします。

遠慮することなく獰猛に相手に攻撃を仕掛けるので、非常に荒々しい性格といってもよいかもしれません。

底部ではなく、水槽上部を泳ぐ魚がいても攻撃しにいく、とてもファイトのある魚です。

こういった性格のため、他の魚との混泳にはまったく向いていません。

同種に対しても攻撃姿勢をとることがあるので、基本的には単独飼育が理想です。

ヌマチチブを飼育するためには

エサは、もともとの生態を考えると赤虫やイトミミズが近いものといえるでしょう。

しかし、こうしたエサは砂利などの下に潜り込んでしまうため、水が汚れがちになってしまいます。

人工飼料であれば、同じく肉食であるザリガニのエサがよいでしょう。

値段も安価で長期間保存できるので、手元に置いておくと便利です。

水質に関してはそこまで神経質になる必要はありませんが、水温には注意しましょう。

適温の目安は25〜28℃くらいとし、夏場冬場に極端な温度変化がなければ生きていくことができます。

寿命は約1年ととても短命な魚ですが、稚魚から1年で成熟して繁殖をすることができます。

上手に繁殖できれば、長く飼育するということは可能です。

ヌマチチブを飼う時に気を付けるポイント

先に性格について紹介した通り、見た目に似合わず獰猛な性格の持ち主です。

ヌマチチブの複数飼いは、いちばん強い魚が他のヌマチチブを殺してしまうのでやめた方がよいでしょう。

繁殖のためにオスメスのペアで飼育しても、相性が合わないことも多くあります。

そうした悲劇を防ぐには、やはり一匹で飼うのがベストといえます。

エサに赤虫やイトミミズなどの生エサを使用する場合には、砂利に潜り込む可能性があります。

そうしたエサを使用する場合には、砂利を敷かない方がよいでしょう。

基本的には、水槽の底の方でじっとしていることが多いのですが、川を遡上するような瞬発力のある魚です。

飛び出さないようにフタをしておくのが無難でしょう。

ヌマチチブの繁殖のコツ

同種間のオスメスでもケンカをするような魚なので、ペアで飼えばうまく繁殖できるものではありません。

まずは相性のよいペア探しというところからが、繁殖のスタートになります。

相性が合えば、自然と繁殖をしてくれるようになります。

繁殖に適しているのは水温が20℃異常であること。

季節でいうと5〜9月が野生のヌマチチブの産卵期になります。

ヌマチチブはオスが水底の石や流木の下に産卵室をつくり、そこにメスを招き入れます。

ですので、砂利を敷く、もしくは流木を多めに水槽に用意してあげましょう。

産卵すると、オスが水流などから卵を守るように保護します。

必須ではありませんが、稀に卵を食べてしまうことがあるので、産卵後は別の水槽に分けた方がよいでしょう。

ヌマチチブの特徴を知ろう

身近な川にも生息しているヌマチチブですが、その存在を知らない人も多くいると思います。

地域によっても呼び方が異なるので、地方名で聞き慣れている人も多いかもしれません。

見た目や名前の語感からは想像できないような性格の持ち主というのもとても面白いですよね。

熱帯魚ショップでもそれほど目立つ存在ではありませんが、普通の熱帯魚に飽きてみたら挑戦してみてはいかがでしょうか。

寡黙なヌマチチブとの静かな同棲も、新鮮かもしれません。