ヤドカリは巻貝の中に体を隠して移動や生活をする、エビ・カニの仲間です。

背負った貝殻や動きに愛嬌があり、ペットとしても人気ですが、独特な生態を持つ謎の多い生き物でもあります。

ヤドカリを飼育するためには、どのような設備や道具、気配りが必要なのでしょうか。

頑丈な飼育エリアが必要

ヤドカリは大きなハサミを持っています。

薄いプラスチック容器や発泡スチロール、木箱などでは簡単に穴を開けてしまいます。

また、足には鋭い爪があり、あらゆるものに足を引っかけて登ることができます。

簡易的な飼育設備だと簡単に脱走されてしまう危険があるため、飼育する場所はより頑丈で、逃げにくくする必要があります。

魚を飼育するためのアクリル・ガラス製の水槽が入手しやすく、適しています。

60cmの水槽を使用すると、大きいものなら3~4匹、小さいものは10匹くらいを飼うのが適しています。

ヤドカリの飼育環境

ヤドカリには、砂浜を歩いている姿をよく見かけるオカヤドカリと、それ以外の水中で暮らしているヤドカリがいます。

どんな生活圏で暮らしているヤドカリを飼うかで、飼育環境も変わってきます。

オカヤドカリを飼う場合には、水槽の中で砂の陸地と海水の部分が両方存在する、テラリウムのような設備が適しています。

砂浜や浅瀬と似た環境を整えてあげることが大切です。

それ以外の水中生活をするヤドカリは特に陸地を作ってあげる必要はなく、魚を飼育する要領で水槽に水を張って飼育が可能です。

どの種類も、脱皮や貝殻の引っ越しの際には隠れて行うことが多いため、石を積んで周囲から死角になる場所を作ってあると良いです。

あまり石を高く積み上げたり、水上まで届きそうな枝などを入れると脱走する危険があるため、注意が必要です。

また、温かい海で暮らしている生き物なので寒さにとても弱いです。

冬場にはヒーターを入れて、温度を調整することが大切です。

適温は25~30℃、湿度も70~80%程度が理想的です。

引っ越し用の貝殻を用意

ヤドカリは体が大きくなって、入っている貝殻が小さくなると、大きな貝殻に引っ越しをする習性があります。

自然下では大きな貝殻を自力で探すことができますが、飼育下では引っ越し用の貝殻を用意してやる必要があります。

使用する貝殻は、サザエやヤコウガイなどの巻貝です。

ペットショップやネット通販で買えますし、海で拾うこともできます。

ヤドカリは意外と好みにうるさく、何度も品定めしながら貝殻を選びます。

大きさが合わなかったり入り心地が悪いと、次々に貝殻を取り換えていきます。

ヤドカリの成長に合わせて、できるだけ色々な種類や大きさの貝殻を用意してあげましょう。

水質の管理・海水濃度

広大な海とは違い、水槽の中などの飼育環境では、すぐに水質が悪くなってヤドカリの健康にも悪影響を及ぼします。

水の中にはろ過装置やエアレーションを投入して、水に酸素を送り込んで循環させることで水質を長く良く保つことができます。

水量は多いほど悪化しにくくなります。

可能な限り大きい水槽を使用するなど、広い飼育環境を確保することでヤドカリにもストレスを与えずに育てることができます。

それでもエサの食べ残しや排泄物によって水が汚れてきます。

オカヤドカリのような陸生のヤドカリを買う際には毎日、水生のヤドカリを飼育する場合は2~3週間に一回は水替えを行います。

水の水面が泡立って消えなくなってきた時が、水の替え時です。

泡立ちは放置しておくとアンモニアを発生させるため、こまめに確認が必要です。

水を変える際には、基本的にペットショップで人工海水を購入します。

近くで海水が手に入る場合は海で汲むなどの方法も可能ですが、人の出入りが多い海岸や浅瀬の海水は、生活排水などで汚れている可能性が高いため、ヤドカリの健康的にはよくありません。

キレイな海水の確保が難しい場合は、人工的に作ったもののほうが安全です。

自然の海水の塩分比重は1.023です。

この濃度の海水を作ることで、ヤドカリの体に負担のない環境を作れます。

濃度の計測は目視では難しいため、比重計を一緒に購入することがオススメです。

与えるエサの種類

ヤドカリは雑食性で、海ではお掃除係として海洋生物の死骸や海藻や苔など、海で得られるものは何でも食べます。

ペットショップにヤドカリ用のエサが販売されているため、基本的にはそれを与えます。

ですが個体によっては好き嫌いがあったり、継続的に同じものを食べていると、次第に飽きて食べなくなる場合もあるため、他のエサも混ぜながら与えると変化があって良いです。

熱帯魚のエサや果物なども喜んで食べます。

アサリや海藻など、生のエサを与える時には雑菌に注意して、冷凍するなど殺菌してから与えるのが理想的です。

ヤドカリが落ち着ける環境を整えてあげよう

ヤドカリは飼いやすいペットですが、臆病でデリケートな一面もあります。

ストレスなく飼うためにはヤドカリが落ち着ける静かで広い環境や、ちょっとした隠れ家を用意してあげることが大切です。

水質を保って清潔にすることで、長く元気に育ってくれます。