熱帯魚の水槽に小さなエビがいるのを見ることがあります。
これらは苔や汚れを食べてくれる掃除屋として魚と共に飼われているのです。
一見、脇役と思われがちなエビ達ですが、彼ら自身もとても魅力的な水生生物です。
ヤマトヌマエビの生態、特徴
ヤマトヌマエビは、エビ目、ヌマエビ科に属する生き物です。
体長はオス35mm、メス45mmとヌマエビ科では大型です。
体色は半透明で淡青色、緑褐色をしており、線状に赤い斑点が付いています。
この線については、メスが破線で、オスは点線になっています。
尻尾には黒い斑紋が見られます。
野生での生息地は主にマダガスカル、フィジー、日本などのインド太平洋沿岸地域です。
キレイな水を好み、水草の多い場所や、川の渓流、中流などに生息しています。
ヤマトヌマエビの成体は淡水生ですが、幼生期は海で過ごし、川に戻る回遊型生物です。
雑食性で、野生下でのエサは、藻、小動物、生物の死骸、微生物などです。
また、夜に活発に動きまわる性質があります。
寿命についてはは2~3年のようです。
元々、日本にも生息しているエビであり、環境適応しやすく、丈夫で飼いやすい種類です。
飼育下適温は、10℃~28℃です。
ヤマトヌマエビの飼育
ヤマトヌマエビは4~5匹で30cmの水槽、60cmサイズで10匹ほどを目安に飼育します。
成体は淡水で飼育可能ですが、幼生(ゾエア)と稚エビは汽水と呼ばれる、
海水と淡水が混じった水で飼育を行います。
エビ類は、水のphの値や急激な水温の変化などに弱いので、成体もそうですが、
成長した幼生を淡水に移す際なども大変苦労します。
この過程は水合わせと呼ばれ、エビが急な水温変化で死んでしまわないように行う方法です。
急に水槽に入れると確実に良い結果になりませんので、
水槽の中に飼ってきたエビのビニール袋を浮かべて、徐々に馴れさせる必要があります。
また、水槽をセットしても一週間程度置いてからでなければ、
有益なバクテリアが発生せず、エビの生息可能な環境にはなりません。
このような環境作りをした後、水合わせをしてエビを水槽にいれましょう。
ヤマトヌマエビの飼育で必要なものは、底砂(砂利)、無農薬の水草(ウィローモス、アヌビアスナナ等)、隠れ家となる流木やコンクリートブロック、エアレーションポンプ(夏場酸欠になりがちなエビに水流で酸素を送るもの)フィルター、掃除用具、差し水用のバケツ、水温計、エビの移動時にすくうネット、水草を育てるための照明、底砂の糞などを取り除く掃除用のポンプなどもあると便利です。
エサについては苔が十分水槽にあれば、エビ用のエサを一週間に一度与えるぐらいで十分です。
他にも人間の食べ物、ソーセージ、ちくわ、キュウリなども食べます。
注意事項としてはあまりエサをあげすぎると苔を食べなくなり、水槽の水質が悪くなってしまうことです。
また、めったにありませんが、お腹が空きすぎると、同居人のメダカや、同じヌマエビ科のミナミヌマエビなどを襲う事例もあるようなので、エサは少なすぎず、多すぎず与えましょう。
ヤマトヌマエビの繁殖
ヤマトヌマエビの繁殖は、他のヌマエビ科に比べて、大変難しいとされています。
それは幼生や稚エビが汽水で育つのに対し、成体は淡水生と水質の種類が異なるからです。
ある程度成長した幼生を淡水に移す際もうまく適応できず、死滅してしまうということもたびたびあります。
もし、ヤマトヌマエビの繁殖を行うのであれば、他の魚などとの混泳ではなくヤマトヌマエビだけを別の水槽で飼う必要があるでしょう。
小さな幼生は他の魚のかっこうのエサになるからです。
ヤマトヌマエビの繁殖期は、自然界では春から秋ですが、水温を20度程度に保てば、飼育下では年中繁殖期を迎えます。
メスは繁殖期になると、背中の卵巣が大きくなり目立つようになります。
その後産んだ卵をお腹に抱えるようにして育て、時期が来ると放卵します。
一度に生まれる卵の数は500~1,500個とも言われますが、ヤマトヌマエビの幼生は育つのが難しく、同種のミナミヌマエビのように大繁殖はしません。
運よく孵化させることができたら、すぐに幼生を事前に作っておいた汽水に移しましょう。
親が食べてしまうこともあるからです。
とても小さいのでスポイトなどで吸い、ルーペなどで確認するといいでしょう。
この汽水は栄養豊富でないと幼生が育たません。
ある程度、置いておいてグリーンウォーターにするなどの工夫が必要です。
その後、稚エビになったら、淡水に徐々に慣れさせます。
ヤマトヌマエビの特徴を知ろう
ヤマトヌマエビは水槽の脇役のイメージが強いですが、小さいエサを口に一所懸命運んで食べる様子は、
他の熱帯魚にも負けず劣らず魅力的です。
また、繁殖は難しいとされていますが、お腹に卵を抱えて世話をする様子や、
放卵された時の嬉しさなどはひとしおなので、ぜひチャレンジしてみる価値があるでしょう。