犬の排便の状態は、健康状態を示す大切なバロメーターです。
もしあなたの愛犬が「以前よりも便の状態が細くなっている」と感じた場合、どのような原因が考えられのでしょうか?
前立腺の腫れ
前立腺は直腸の真下にあるため、大きくなると直腸を圧迫してしまいます。
便が細くなるなどの症状自体は軽度であることも多いため、他の病気の検査や治療の際に偶然みつかることもあります。
前立腺の腫れには良性のものと悪性のものがあります。
去勢していない雄犬は通常前立腺は肥大していて、そのほとんどが前者です。
一方悪性のものは前立腺癌などがあり、この病気は去勢・未去勢に関係なく発生します。
診断には、レントゲン検査や超音波検査などを実施します。
前立腺肥大であれば、去勢手術や内服薬で前立腺を縮めることができます。
しかし、前立腺癌であった場合、摘出手術や抗癌剤などの治療を行います。
会陰ヘルニア
去勢していない雄犬や高齢になってから去勢した雄犬は、男性ホルモンの影響で肛門周囲の筋肉が緩みやすくなっています。
緩んだ筋肉が原因で骨盤内の腸が蛇行してしまい、便が出づらくなる病気が会陰ヘルニアです。
症状として一番分かりやすいのは、肛門の横が腫れていることで、片側もしくは両側に見られます。
また経過が長いことが多く、最初は軽度の便秘から始まりますが、次第に排便に時間を要したり便が細くなります。
会陰ヘルニアの多くは直腸検査で分かることが多いですが、レントゲン検査や超音波検査なども合わせて行うこともあります。
治療としては、外科手術や緩下剤の内服や摘便などの内科治療があります。
内科治療はあくまでも対症療法であり、会陰ヘルニアの進行を止めることはできない方法です。
症状が改善されなかったり、重度のヘルニアでは外科手術を提示されるでしょう。
なお、会陰ヘルニアが進行し尿までも出づらくなってしまうと命に関わるため、緊急手術が必要となることがあります。
腸のポリープ
人気犬種のミニチュアダックスフントは、大腸のポリープの報告が多い犬種で知られています。
大腸にポリープが発生すると、便が圧迫され便が細くなったり血が混じったり、ひどくいきむと肛門からポリープが飛び出してくることもあります。
診断には、直腸検査やレントゲン検査、超音波検査、内視鏡検査などが必要です。
治療法は、内視鏡下のポリープの摘出や外科手術、抗炎症剤などの内服があります。
大腸の腫瘍
大腸に腫瘍ができると腸の内腔が狭くなるため、便が細くなることがあります。
腫瘍が悪性であった場合、便が細くなる以外にも食欲がない、痩せてきた、よく吐くなどの症状も合わせてみられることが多いです。
診断には、レントゲン検査や超音波検査、細胞診検査などを実施します。
治療法は、診断された腫瘍の種類や進行の程度によりますが、外科手術や抗癌剤の投与などがあります。
膣の腫瘍
膣は直腸と接近しているため、腫瘍ができると直腸が圧迫され便が細くなることがあります。
また、腫瘍には良性のものと悪性のものがあります。
避妊をしていない雌犬は、中高齢になると女性ホルモンの影響で膣平滑筋腫などのポリープを発症することがあり、これは良性であることがほとんどです。
一方、悪性のものには、平滑筋肉腫などがあげられます。
診断には、触診やレントゲン検査や超音波検査、病理組織検査などを実施します。
治療は主に外科手術で、避妊手術に合わせて腫瘤や膣の摘出手術を行います。
肛門周囲の腫瘍
肛門の周りに固いしこりがあったら、それが細い便の原因である可能性があります。
しこりによって肛門が硬くなって広がらなくなったり、圧迫されたりして便は出づらくなります。
またしこりが大きいと見た目は会陰ヘルニアに似ていることもあります。
代表的なしこりには、肛門周囲腺腫などの男性ホルモンが影響して発生する良性の腫瘍や、アポクリン腺癌などの悪性の腫瘍があります。
診断にはレントゲン検査、超音波検査、細胞診検査などが必要です。
治療法は、診断された腫瘍の種類や進行の程度によりますが、外科手術や抗癌剤の投与などがあります。
犬の便が細くなる病気を知ろう
便が細くなる原因は、腸の病気だけではないことがお分かりいただけたでしょうか?聞き慣れない病名がたくさんあったかと思います。
飼い主の方がみて「明らかに便が細くなっている」と気づいた時は、何らかの病気が潜んでいると考えましょう。
犬は全身が毛で覆われているため、肛門周りの腫れやしこりといった異常にも、注意深く見ないとなかなか気づきにくいものです。
便が細くなっている以外にも、便に血が混じっていないか、吐き気はないか、食欲はどうかなど、気になる症状をまとめてみましょう。
病気によってはできるだけ早めに治療を行った方がよいものもありますので、まずは信頼できる動物病院を受診することをオススメ致します。