犬の聴覚は人より優れており、約4~6倍、耳が良いと言われています。

犬は人よりもたくさんの音が聴こえている状態で日常生活を送っていることになります。

それでは、人が耳障りな音を嫌ったり穏やかで美しい音を好むように、犬にも「好きな音・嫌いな音」があるのでしょうか。

おもちゃの音、おやつの袋の音、ごはんの音

例えば、子犬の頃に好きだったおもちゃの音。

成犬になってもそのおもちゃの音を鳴らすと飛んでやってきます。

楽しい思い出のあるおもちゃの音は成犬になっても大好きです。

また、何かの袋を開封したとき、こちらをじっと見ながら尻尾を振り、良い子にして待っていることがあります。

これは昔、袋を開封する音が聴こえた後におやつを貰えたという記憶を思い出し、もしかしたらまたおやつを貰えるかもしれないと期待しての行動です。

いつも与えているドライフードをお皿に入れた途端に、たとえ寝ていたとしても飛び起きてやってくるのも、お皿に入れる音=ごはんが貰えるときの音と覚えているからです。

犬は過去に経験したことをよく覚えています。

良い記憶に結びつく音は、好きな音として覚えているのです。

高い声

犬の可聴域は約40ヘルツ~65,000ヘルツ、人間の可聴域は約20ヘルツ~20,000ヘルツです。

人間に比べて犬は幅広い周波数の音を聴き取れていることになります。

また、人間の声は約200ヘルツ~4,000ヘルツの周波域です。

高い声ほど高い周波数になります。

人間の声の周波域は犬の可聴域内にありますが、一般的に、男性の低すぎる声よりは女性の高い声の方が犬にとって聴き取りやすい周波数であるため、女性の高い声を心地が良い音と感じるようです。

ただ、声の周波数の問題なので、男性だろうが女性だろうが、高い声の人は犬に好かれ、低い声の人はあまり懐いてもらえないということになります。

飼い主が自分を褒める声

飼い主にきちんと服従するようしつけられている犬は、飼い主に褒められることが大好きです。

褒められると尻尾を振りながら飼い主にまとわりついて大喜びします。

犬は自分が褒められるときに飼い主が発する言葉や口調、声のトーンをよく覚えています。

犬のしつけをする際に、成功したら大げさに褒めてあげることを繰り返すと犬は覚えてくれやすいとよく言われますが、これは、犬は飼い主に褒められることが好きであること、そして飼い主が自分を褒めるときの声を好きな音として記憶しているからこそです。

例えば、普段犬に対して怒るときの声のトーンで褒め言葉を言うと、犬は途端に不安そうな表情になり、少し遠巻きに飼い主の様子を窺います。

褒められるときの言葉だけではなく飼い主の声のトーンとあわせて覚えているため、いつもと違う音であることに敏感に反応しています。

破裂音(雷、打ち上げ花火など)

人間でも突然聴こえる破裂音は時に恐怖を感じるものですが、犬も同様、破裂音は怖いようです。

例えば「雷の音」。

だんだん近づいてくる雷に落着きを無くし、近所で雷音が轟くや否や一目散に一番安心できる場所に逃げ込んだり、布団に頭を突っ込んで隠れようとする犬がいます。

また、花火大会の日の打ち上げ花火の爆裂音に怯えて逃げようとする犬もいます。

似たような破裂音がテレビから聴こえて来た場合も同様です。

これは、何故そんな破裂音がしているのか犬には理解ができず、恐怖を感じるからです。

危険から身を守ろうとしての行動です。

子犬の頃から雷や花火の音を経験し、自分に害のない音だと認識している犬は平気な場合もあります。

電子音、機械音(電話、インターフォンなど)

前述の「破裂音」に限らず、何故聴こえるのか理解できない音を犬は嫌います。

よく、電話やインターフォンの音が鳴ると大騒ぎして吠える犬がいますが、犬は唐突に鳴り響く音に対して警戒し威嚇しているだけです。

電話やインターフォンのような機械的な音は自然界には存在しない音ですから、犬に理解できないのは無理もありません。

他にも、電話から聴こえてくる声や家電製品から聴こえる音楽やメッセージにも同様の理由で敏感に反応します。

人間の子供用の動くおもちゃに異常なまでに吠える犬もいます。

全て、犬にとって理解不能な音であることが原因です。

危険な音ではないのだということを経験によって学ばせると、騒がず大人しくしていられるようになります。

消防車やパトカーのサイレン

よく、消防車やパトカーのサイレンが聴こえると、一緒に遠吠えを始める犬がいます。

飼い主にとっては近所迷惑になるのですぐにでも止めて欲しい遠吠えですが、犬にとっては本能でつい取ってしまう行動です。

犬には本来、身の回りに危険が及んだときや、自分が群れから離れてしまったことを知らせるときなど、良くないシグナルを仲間に知らせるために遠吠えをする習性があります。

この遠吠えの周波数は約30,000ヘルツと言われています。

消防車やパトカーのサイレン音は遠吠えの周波数と近い音であるため、犬は本能的に危険を感じ、遠吠えする本能が働いてしまいます。

サイレン音は危険を感じ不安になる音であるのですから、犬にとって出来れば聴きたくない嫌な音ということになります。

犬が嫌いだと思う音を減らしてあげよう

犬は人よりも耳が良いため、音に過敏に反応しながら日常生活を送っています。

そして、聴こえてくる音を本能的に、または過去の経験から「好きな音」なのか「嫌いな音」なのかを判断しています。

「嫌いな音」は飼い主が思った以上に、愛犬にとってストレスになっている可能性があります。

なるべく「嫌いな音」を聴かなくて済むように配慮してあげること、または、危険な音ではないのだと学ばせてあげることが大切です。