お腹が張っている猫

日頃の猫とのスキンシップの中で、なんとなくお腹の張りに気づくことがあります。

それは何らかの体の変化を示している可能性があります。

そこで今回は猫のお腹が張っている時に考えられる原因についてご紹介します。

便秘

便秘症になると十分に便が排出されないことで、腸管に便が溜まり、お腹が張ってくるようになります。

便秘症は高齢や何らかの病気で消化管の運動が低下したり、毛づくろいで舐めとった被毛が便に絡まり便を固くしたり、骨格の先天的な異常や交通事故などによる骨盤の変形が原因になったりします。

便が出ないため何度もトイレに行く様子や、力み過ぎることによる嘔吐、食欲不振に陥ることもあります。

そのため、便を柔らかめにして排出しやすくする食エサや消化管の運動を改善する薬、中には定期的な浣腸が必要になる場合もあります。

便秘を長い間放っておくと、大腸の一部の結腸と言われる部分が拡張したままになり、消化管の運動が低下して巨大結腸症になります。

先天的な異常や交通事故に起因する場合も多くありますが、便秘症の早期発見と治療、食事管理などが治療になります。

結腸を外科的に切除する方法もありますが、術後も食事管理や内科治療は必要になります。

妊娠

猫は一般的に生後6~9ヶ月ぐらいで発情を迎えます。

しかし、この段階では雌猫は成長段階であり、発情周期が安定してくるのは生後12ヶ月を過ぎてくらいからだと言われています。

猫は季節的に多発情で、発情周期は日照時間と強さが関連しており、北半球では春、夏、秋に発情期が見られます。

また排卵に特徴があり、交尾した刺激で排卵をするため妊娠する確率が高くなります。

他の猫との接触がなければ問題ありませんが、外に出る猫の場合、避妊手術をしていなければ、交尾・妊娠する可能性が十分にあります。

妊娠した場合、猫の妊娠期間は一般的に63~65日間です。

出産までの間に体重は増加し、腹部も張りが出てきます。

また猫は生後12ヶ月を過ぎていなくても妊娠する可能性があり、妊娠した場合は若齢で成長段階にもあるため、異常分娩になることがあります。

逆に高齢でも繁殖能力があり、10歳で出産したという事例もあります。

高齢で妊娠した場合も奇形や死産の危険性が増します。

そのため、予期せぬ妊娠を防ぐためにも避妊・去勢手術は有効であり、様々な病気の予防にもつながります。

腸閉塞

誤って飲み込んでしまったビニール、紐、おもちゃなどが腸で詰まり、閉塞を起こすことがあります。

閉塞を起こすことで腸が正常に動かず、腸にガスが溜まり、腹部が張ってきます。

また激しい嘔吐や腹痛、食欲の低下なども見られます。

場合によっては腸が異物や炎症により穿孔することがあり、腹膜炎などを起こすと病状は更に重篤化します。

また消化管の腫瘍、激しい腸炎、腸の一部が潜り込んで重なってしまう腸重積などからも腸閉塞を起こします。

異物による腸閉塞では、ほとんどの場合外科的に異物を摘出します。

異物が腸を傷つけ、腸が壊死している場合には、腸を部分的に切除する事もあります。

猫は色々なものに興味を持ち、おもちゃにするため、普段から注意をすることが必要です。

特に異物摂取癖のある猫は繰り返し異物を摂取することが多く、万が一飲み込んでしまった場合には嘔吐や排便の様子、お腹の張りなど注意して観察し、早めに動物病院を受診しましょう。

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症では子宮に膿が溜まり、子宮内膜の増殖が見られます。

どの年齢の猫でも発症しうる病気であり、発情終了後に始まり、細菌感染が関与しています。

一般的に元気食欲の低下、発熱、腹部の張りなどが見られます。

発見が遅れると重篤化する場合もあり、卵巣・子宮の摘出手術が必要になります。

発情後に発症することが多く、妊娠と間違えやすいため、疑われる場合は動物病院を受診し、的確な診断・治療を受けることが大切になってきます。

また、避妊手術は子宮蓄膿症の予防になります。

腹腔内腫瘍

腹腔内の肝臓、脾臓、腎蔵などの臓器が腫瘍化することで腹腔内を圧排し腹部が張ってきます。

腫瘍には様々な種類のものがありますが、近年では獣医療の発展や飼い主の意識の高さ、生活水準の向上などから猫の寿命は伸び、それとともに腫瘍・癌のリスクも高くなり、死因のトップになっています。

それゆえに、飼い主がいち早く猫の異変に気づけるか、癌の早期発見が非常に重要になります。

猫伝染性腹膜炎

猫伝染性腹膜炎とは、猫伝染性腹膜炎ウィルスによる感染症です。

猫伝染性腹膜炎は胸水や腹水が貯留する滲出型(ウェットタイプ)と、胸水や腹水が貯留しない非滲出型(ドライタイプ)があります。

感染初期には発熱、食欲不振、嘔吐、下痢、体重減少が見られます。

滲出型では胸水・腹水が貯留することで、お腹が張り呼吸も苦しくなります。

非滲出型では神経症状や眼病変が見られ、また腹腔内臓器に肉芽腫を作り、多臓器不全を起こします。

猫伝染性腹膜炎は有効な治療法は確率されておらず、点滴や二次感染予防に抗生剤などを投与し症状の緩和を図ります。

また、有効な予防法もなく、致死的な病とされています。

猫のお腹に張りがある時の原因を知ろう

猫のお腹に張りがあった時、病気のサインかもしれないという認識をもっていることで病気の早期発見に繋がります。

それには、日々の猫とのスキンシップから健康な状態を把握し、変化に気づく観察力を身につけることが大切です。