鈴虫は日本原産の昆虫で、その美しい鳴き声が親しまれ、平安時代にはすでに飼育されていました。

また、江戸時代には養殖もされて庶民の間にも広まっていきました。

非常に長い間人間と関わってきた身近な昆虫です。

今ではむしろ養殖されたものの方を多く目にします。

しかし、都心でも小さな植え込みから野生化した鈴虫の鳴き声が聞こえることもあります。

鈴虫の飼育は容易ですが、それなりにポイントを抑えないと簡単に死んでしまう虫でもあるので、鈴虫飼育のためのいくつかのポイントをご紹介します。

飼育ケースと置き場所

鈴虫の飼育はプラスチックの飼育ケースで問題ありません。

鈴虫の足には吸盤のようなものがないので、ジャンプして届かない高さのものがあれば良いです。

飼育用のケースでなくても、底が深いタッパーウェアの蓋に空気穴を空けて、そこで飼うこともできます。

鈴虫は最近では6月頃から温度調節して促成栽培した成虫が売られていることがありますが、本来は7月ぐらいに孵化して、8月から9月以降にかけて成虫になり、繁殖活動をします。

比較的暑さに強い虫だとはいえ、直射日光が当たるようなところに置いてはいけません。

鈴虫のような小さな虫は、短い間でも直射日光に当たると死んでしまうことがあります。

そもそも鈴虫は自然界でも、明るい場所よりも草が茂った暗い木陰などを好みます。

ですので、ケースは風通しがよく日が当たらない暗い場所に置いておきましょう。

そのうえで、隠れ家になるように縁がかけた小さめの植木鉢を置いてあげたり、ペットショップで売っているような枯れ草などを敷いてあげたりすると良いでしょう。

エサの種類とあげ方

鈴虫はコオロギの仲間で、草食性のバッタとは異なって雑食性です。

エサの主体は草などですが、ときには昆虫の死骸なども食べます。

飼育下では植物性のエサが主体でも大丈夫です。

しかし、動物性のものが不足すると共食いをすることがあるので、たまに動物性のものを与えます。

昔から鈴虫飼育といえば割り箸などに刺したきゅうりやなすを与えるのが定番となっています。

ただ、これだけでは栄養が不足するので、小松菜やキャベツなどの葉物野菜も与え、週に1度ぐらいは煮干しなどを与えます。

水分は野菜に含まれるものだけで足りますが、たまに霧吹きでケースの壁面に水を吹きかけてあげても良いです。

この場合、直接鈴虫に吹きかけないようにします。

清潔を保つ

鈴虫は食欲旺盛でその分排泄の頻度も多く、こまめに掃除しないとすぐにケース内の環境が悪化して弱ったり死んでしまったりします。

ケースには土を敷く必要はありませんが、掃除をしやすいように新聞紙などを敷いておくのがベターです。

また、掃除の間鈴虫を移しておく空の容器があると便利です。

鈴虫を飼育する時期は物が腐りやすいので、エサは必ず毎日取り替えます。

掃除は基本週に1回ほど。

ただ、中の様子を見て汚れていれば即掃除した方が良いです。

鳴き声の聞き方

鈴虫を飼育するからには、やはり美しい鳴き声を聞きたいものです。

鳴くのはオスの鈴虫です。

他の多くの鳴く虫と同様、メスの気を引くために鳴きます。

鈴虫は夜行性なので、鳴くのは夜のうち。

ただし、暗いところに置いておけば昼間でも鳴くことがあります。

逆に夜でも鳴く姿を見ようと明るいところにケースを出すと鳴きませんし、人の気配があると警戒して鳴かないこともあります。

鈴虫が鳴きやすい環境を整え、自然に鳴いてくれるのを待って耳を傾けましょう

繁殖のしかた

飼育するだけならばケースに土を敷く必要はありませんが、繁殖させたい場合はケースに園芸用の黒土や赤玉土などを敷いて、つがいで飼育すれば産卵します。

ポイントは湿度を保つこと。

成虫が生きている間はもちろんのこと、成虫が死んでしまった後でも湿度を保ち続けると、翌年の6月から7月ぐらいには孵化します。

産卵させるのは簡単でも、忘れず湿度を保ち続けるのは大変です。

比較的簡単なのは、飼育時に使っていた土をタッパーウェアに移し、蓋の四隅と中央ぐらいに5~10個ほどの小さな穴を錐などであけて、蓋をして下駄箱など温度変化が少ない場所に置いておくことです。

空気穴はシャーペンの芯が通るか通らないか程度にします。

その程度でも空気は通るし、コバエなどの害虫が入り込むのを防げます。

ただ、土と蓋の間にはある程度スペースをあけ、ぎっしりつめ込まないようにします。

水は掴んで水滴がしたたる程だとあげすぎです。

ちょっと触ってしっとりしている程度にします。

月に1度ぐらい中身を確認して、乾燥気味なら水を霧吹きします。

これで翌年幼虫の姿を見られる確率が上がります。

鈴虫を飼う際の注意点

飼育するときは、狭いケースに大量に入れるとすぐに環境が悪化してしまいますし、共食いが発生する危険性も増してしまうので、30cm程度のケースであれば5匹程度、多くとも10匹を超えないぐらいに抑えます。

飼育する鈴虫が、もし近所で捕まえたものであるならば、同じ場所に放すのは問題ありません。

しかし、お店で買った鈴虫をその辺に放すのはやめましょう。

鈴虫を飼ってみよう

秋の風物詩として欠かせない存在の鈴虫。

ぜひこの機会にご家庭で飼ってみてはいかがでしょうか。